●場所 郷ノ浦町郷ノ浦491(郷ノ浦港から右折、今西酒店を左折し、先を右折、左折、左折。)
●建立年月日 文政十亥(1827) 暦初冬
●建立者 鳥悦他22名
けふばかり
人も年寄れ初志ぐれ
芭蕉
碑陰左面 一心山 於 光誉代
碑陰右面 文政十亥 暦 初冬
正面 施主 (以下横書に) 鳥悦 甫雪 柳徳
平河 古庭 二朗 似□
行脚 対草
台座左面 山暁 登明 維水 梅実 其玉 甫□ 祐圃
台座右面 染花 楚柏 虎遊 □雅 □白 其弟 哉来
高104□ 幅50 台石高45
*以上22名の施主があるが内一人が行脚(旅の僧)対草となっているのが興味深い、と西川左生が書いている。
立て看板には
「風流な初しぐれが降りだしてきた。
なんとうれしいことだろう。こんな日は
いつも元気いっぱいで走り回っている人も、年をとった人の様に、しみじみとした気持ちになって初しぐれのものさびしさをあじわってもらいたい。この句は元禄五年(1692)10月3日芭蕉が江戸の『許六』という人の家に遊びに行った時に詠んだ句」とある。 郷ノ浦町の一心山興福院 専念寺(浄土宗)の境内にある。以前は郷ノ浦の町中の通りにあったが寺とともにこの地に移された。文政10年(1827年)に建てられたようだ。寺から見る郷ノ浦の港や街のながめは素晴らしい。この句碑がなぜ建てられたのかは不明。現在本市で見つけられている3基あるうちの1基。芦辺町の2基も寺に建てられている。
この句は芭蕉が48歳ごろ、彦根藩邸で開かれた句会で詠まれたとされている。森川許六(きょりく・蕉門十哲の一人)は近江彦根藩士で、芭蕉より12歳年下。芭蕉に入門がかない、芭蕉は許六を絵画の師として仰いだ。
「時雨」はさっと降り、すぐにやむところに無常を感じるものとして、俳諧師らにとっては大切に受け止めてきた。老いてみなければわからないものがある、と芭蕉は示しているのが面白いという。老いることが楽しみになる一句とも。芭蕉はこのあと2年後に亡くなる。
この地に来ていない芭蕉の碑は、俳句愛吟者が建てたのかは不明だが、全国には芭蕉塚は約2400基あるそうだ。 この時代の郷ノ浦での俳句に関する資料は見つけられなかった。

専念寺

専念寺近くから望む郷ノ浦港