令和7年度 第一回 壱岐市小中学校俳句ポスト大会(R7.11.15)

◆はじめに

本年、市内すべての小中学校に俳句ポストを設置し子供たちに投句してもらいました。夏休み終了後に回収しましたところ、その数約1400句ありました。本年は初回と言うこともあり、季重なりや字余り字足らずなどは重要視せず、子供たちの感性を優先して選考しておりますのでご理解をお願いいたします。また関係者の皆様にはこの取り組みに対し、多大なご協力とご支援を頂き感謝申し上げます。次年度以降も継続いたしますので、今後ともご協力よろしくお願いいたします。

俳句、句碑・歌碑の島つくり実行委員会 会長 加藤 武

◆入選作品の表彰について

選者 わかば句会(壱岐文化協会)、あしべ句会(芦辺町文化協会)

選評 芦辺町文化協会 あしべ句会 加藤 武

表彰 各学校・特選 一~二句 ・佳作 五句程度 ・入選 五句程度

◆小学校の部

【盈科小学校】
★特選 父の日がなにごともなくすぎてゆく        五年 永村美愛
☆選評 母の日には料理のお手伝いやプレゼントをあげたりしたから、父の日にも本当は何かしたかったのでしょう。お父さんは今日は父の日とは知っていたけど知らないふりをして待っていたかもわかりませんね。来年は俳句を一句詠んであげたらどうでしょう。

★特選 水たまり雨のらくがき運動場           五年 辻川梨乃
☆選評 ぬかるんだ運動場に何と書いてあったか知りたくなる句です。雨のらくがきの表現が良いですね。これからも情景を想像させるこんな句を詠んで下さい。

【渡良小学校】
★特選 ひんやりとつめたいどろにいね植える       六年 林田彩愛 
☆選評 今では機械での田植えが多いのですが、裸足で田んぼに入って田植えのお手伝いをしたのですね。その時の感じがとても上手に表現されています。 

★特選 鳥は鳴き人は笑ってすみれ咲く          五年 久間夢浬 
☆選評 鳥の鳴き声と人間の笑い声を組み合わせる発想は小学生とは思えないです。しかも下五のすみれ咲くと取り合わせるなどこれは才能ありですね。

【三島小学校】
★特選 やきいもをホクホク食べておいしいよ      二年 德島千大
☆選評 三島小学校は全校生徒が二人です。その兄弟で三句ずつ出してくれました。島で採れたやきいもを兄弟仲良く並んで食べているところが想像できます。
    
【柳田小学校】
★特選 柳田小今年の春に百五十             四年 三浦瑛輝 
☆選評 柳田小学校は今年が創立百五十周年でした。他にも百五十周年の学校は有りましたが、このことを詠んだのは、三浦さんだけでした。式典や牛まつり仮装行列などが記憶に残ったのでしょう。次の創立二百周年の時にこの句を思いだして下さいね。

【沼津小学校】
★特選 おるすばん兄がいなくて夏の空          四年 横山望杏
☆選評 今日はいつもいる兄が居なくて一人で伸び伸びと留守番をしている。しかし兄がいないとなにか寂しいのではないでしょうか。一人は退屈になってきたかな。
  
【志原小学校】
★特選 暑い夏みんなでいこう広い海           四年 山内理輝
☆選評 単に海ではなく「広い海」という言葉がこれから成長していく子供たちに無限の可能性があるということを感じます。自然に出てきた言葉でしょうが読み手は感動します。 

【初山小学校】
★特選 菜の花は光かがやく春の花            四年 泉 咲希奈
☆選評 初山小学校あたりでは菜の花が畑一面に咲くのでしょうか。寒い冬から春に向かって咲く菜の花を光かがやくと表現したところがとても良いですね。

【鯨伏小学校】
★特選 明るいねバレー帰りの夏の空           六年 中嶋志歩
☆選評 バレーの練習を終えて友達と歩いて帰った時のことですか。「明るいね」から疲れを知らない育ち盛りの子供の元気いっぱいな様子が伝わってきます。明るいは空も本人もですね。

【勝本小学校】
★特選 おちばふみオーケストラの音がなる        三年 坂本汐音
☆選評 落ち葉はふかふかで子供たちが踏むと色んな音がします。それをオーケストラと詠んだのはスケールが大きい。いつか本物の生のオーケストラを聞けるといいですね。

【霞翠小学校】
★特選 ミニトマトどこまでのびる気になるな       三年 中原ゆうが
☆選評 学校でミニトマトを育てているのでしょう。小学三年生の背たけはとっくに抜かれさらに見上げる程までに。気になるなが挑戦的で良いですね。

★特選 ドロドロの土にまみれた田植えの日        五年 豊坂陽葵
☆選評 五年生で田植えのお手伝いをしたのですか。えらいですね。田植えで服も手足もどろだらけになったのがよくわかります。そのお米はもう食べましたか。
   
【箱崎小学校】
★特選 夏の夜エアコンうなるぼくの部屋         六年 加藤優翔
☆選評 この頃の夏はエアコンを入れないと寝られないくらいの暑さです。エアコンとくれば涼しいとなるところをうなると表現したことにより暑苦しい熱帯夜の状況をとてもリアルにまた上手に表現できています。

【瀬戸小学校】
★特選 真っ暗の夜道をてらす夏の月           四年 後藤景      
☆選評 今では、子供が夜道を一人歩くことも少なくなりましたが月夜の晩に誰かと歩いた時のことでしょうか。俳句の型にはまった流れの良い句です。

【那賀小学校】
★特選 夏休み三十ぴきのアジがつれ           四年 米村透真
☆選評 壱岐の島では岸壁からアジがよく釣れますね。具体的に三十ぴきと書いたのが大漁と解ります。これ以上釣っても食べきれないですよね。
   
【田河小学校】
★特選 かすれゆく忘れぬあの日のきのこ雲        六年 長嶋はな
☆選評 この句は広島、長崎の原子爆弾のことを詠んでいることは誰にもわかると思います。次第にうすれていき消えかかっていってはいけないことです。私たち大人が語り継ぐことが大事ですね。
             
【八幡小学校】
★特選 五月だよウニでまいにちいそがしい        二年 佐野ひかり
☆選評 八幡地区では海女さんたちのウニ漁がさかんです。取った後ひとつずつ割ってウニを取り出す作業も大変です。お手伝いをしているのでしょうか。生活がよく見えます。

★特選 いもうとが小学校に入学だ            三年 佐藤世絆
☆選評 姉妹で学校に通えるようになったのが嬉しかったのでしょう。一緒に手をつなぎ登校している姿が見える句ですね。とてもほほえましいです。
                                   
【芦辺小学校】
★特選 逆転の一打伸びゆく甲子園            六年 岡本朔太朗
☆選評 春も夏も高校野球が盛り上がりましたね。外野を抜ける鋭いヒットが目に浮ぶ句です。中七の一打伸びゆくは大人でも出て来ないすばらしい表現です。

【石田小学校】
★特選 あまのがわこいのゆくえみちしらず        六年 横山礼人
☆選評 四千億個の星が白い帯の様に流れるのが天の川。伝説ではその天の川を年に一度織姫星と彦星が渡り再会します。横山さんは恋の行方を心配してくれたのですね。壱岐の大先輩の有名な句「松よけて見上げる空や天の川」もありますよ。
           
【筒城小学校】
★特選 夏の空一点取るたび大歓声            六年 江口陽結愛
☆選評 サッカーか野球か分かりませんが球技の試合を応援していたのでしょう。目が離せない試合で敵味方の応援団の歓声がここまで聞こえてきます。俳句の型にはまった流れの良い句です。

◆中学校の部

【郷ノ浦中学校】
★特選 蝉時雨ひとつのボールに夢をのせて        二年 坂口陽香
☆選評 蝉時雨とは沢山のセミが一斉に鳴く様子で本格的に夏の訪れを告げる風物詩です。なんの球技でしょうか。暑い中集中して目標に向かっているのが見えます。

★特選 晴天の青き青きとはしゃぐ子ら          二年 町田紘
☆選評 晴れた日に子供たちが外で暑さなんか気にせずとても元気よく遊びまわっている様子が見える句です。作者も仲間に入り一緒に遊びたいのでしょうか。
   
【勝本中学校】
★特選 夏終わり涙でぬれたユニホーム          二年 小川珠季
☆選評 中体連でしょうか。試合に負けたのか、三年生と組む最後の試合だったのでしょうか。汗と涙でびしょぬれになれるのも青春です。

★特選 夏祭りヒューンと空にうち上がる         三年 田口可南子
☆選評 花火大会に行きましたね。ドーンではなくヒューンの表現が花火にぴったりです。音や状態、様子を言葉でまねたものをオノマトペといいます。

【芦辺中学校】
★特選 燃える陽を浴びて案山子の影落つる        二年 平本陽士朗
☆選評 石田町の西福寺の下に毎年案山子が沢山立ててあります。作者はどこの案山子を見てこの句が出来たのでしょうか。燃える陽の表現が力強くて強い日差しがまだまだ続き、案山子の影がくっきりできてそうです。

★特選 息切らし手をひく先は夏祭り           二年 川上果音
☆選評 この句は一目見て目に留まりました。夏祭りの会場へ妹か弟か、仲のいい男女か分かりませんが。俳句の型ができています。中二でこんな句ができるのかと、将来が楽しみです。息切らしがとても良いですね。
       
【石田中学校】
★特選 かき氷色つき舌で笑い合う            二年 辻田蓮 
☆選評 どうしたらこんな表現ができるのでしょうか。色つき舌など聞いたことないけど、かき氷とくればぴったりきます。中学生ならではの表現でしょうか。

★特選 友の声信じて進むスイカ割り           二年 中村百華
☆選評 友だちの言う通りに進みスイカがあったのでしょうか。それとも地面をたたいたのでしょうか。結果が知りたくなるような楽しい句です。選評 蝉時雨とは沢山のセミが一斉に鳴く様子で本格的に夏の訪れを告げる風物詩です。なんの球技でしょうか。暑い中集中して目標に向かっているのが見えます。


最後に

今年は初めての俳句ポスト大会にもかかわらず沢山の俳句を作って投函していただきありがとうございました。このホームページに掲載されていない句の中にも良い句が沢山ありました。掲載できず申し訳ありません。俳句作りは、むずかしく考えず日ごろの生活の様子を短く5・7・5にまとめすぐにメモしておき後でその中に季節の言葉を一つだけ入れます。それで出来上がりです。①季節のことばは一つだけに。②文字数は5・7・5で出来上がるように工夫。文字数の数え方は夏井いつき先生も壱岐で言われましたが、チューリップが覚えやすいです。これで5文字です。図書館で俳句の本を借りて沢山読むと上手になります。来年も俳句ポスト作品を待っています。